企業を取り巻く労災環境には数年で変化しつつあるように思われます。労災事故といえば、例えば建設現場などで、高いところから落下してしまい大怪我を負ってしまい死亡又は後遺障害が残ったといった「事故による怪我」を想定される人も少なくないでしょう。ところが、近年の労災事故では「過労によるもの」が増えてきています。

怪我の労災事故と過重労働を背景とする労災事故

怪我系の労災事故

建設業、製造業

過重労働労災事故

過重労働による過労系の労災事故

全業種

過労による労災事故には、うつ病、過労による脳・心疾患などがあります。特に精神障害(うつ病等)による労災請求件数は年々増加しているところに着目しましょう。

過重労働を背景とする労災事故について

前述、労災事故は怪我より過労によるものが増えてきていますと書きましたが、ここ最近のニュースでは、この過労によるものが多く取り上げられているように思えます。

平成29年3月30日のヤフーニュースより引用

IT会社がうつ病で退職した元社員の男性(28)を相手取り約1270万円の損害賠償を求めた訴訟で、横浜地裁(石橋俊一裁判長)は30日、「不当訴訟によって男性が精神的苦痛を受けた」として、逆に会社に110万円の支払いを命じた。

 判決などによると、男性は2014年4月、神奈川県内のIT会社に入社したが、長時間労働や上司のパワハラが原因でうつ病となり、同12月に退職した。会社が15年5月に「詐病で退社して会社に損害を与えた」と提訴してきたため、男性も反訴した。

 判決は「会社側が主張する損害は生じ得ない」と指摘。訴状が届いた直後から不眠を訴えるようになるなど男性が精神的苦痛を受けたと認定した。男性の弁護士は「退職後の報復的な損害賠償請求は労働者を萎縮させ、『辞められない』被害を生む」と話した。

これは事案が現実なのですね。会社側として言い分があったとしても退職後に損害賠償とはやりすぎのような気がします。

平成29年3月30日の毎日新聞より引用

運送大手のY運輸(東京都中央区)の長野県内の営業所で40代の男性従業員が自殺したのは上司によるパワーハラスメントが原因だとして、遺族が会社と上司に計約9500万円の損害賠償を求めて長野地裁に提訴したことが30日、分かった。提訴は2月28日付訴えでは、ドライバーなどを務めていた男性が2012年秋以降、上司のセンター長から「死ね」などの暴言や、殴るなどの暴行といったパワハラを頻繁に受けてうつ病を発症し、15年1月に自殺した、としている。労働基準監督署は昨年3月、男性の自殺を労災と認定した。Y運輸広報部の担当者は「係争中のためコメントを控える」としている。

大手企業でもこのような事が営業所で起きているのですね。人間関係から起きるこれらの問題はどこの企業でもあり得るような気がします。

パワーハラスメントの問題について

パワハラは法律違反になる可能性があります。企業では従業員向けに、パワハラについて研修等を行って注意喚起を行っていたり、また、対策室や相談室を設けたりしている企業も増えてきました。

そんな中、現職国会議員によるパワハラのニュースが入ってきました。国では働き方改革を謳っているのですが、どういう事でしょうか?

平成29年6月27日のライブドアニュースより引用

秘書に絶叫調で怒鳴り立て、殴っていると思われる音声がテレビやネットで広まっていく豊田議員。北村弁護士は、刑法上の名誉毀損罪、侮辱罪に当たらずとも「民法上の不法行為に当たる。いわゆるパワハラです」と述べた。厚生労働省はホームページでパワハラの定義について「同じ職場で働く者に対して職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為」としている。

パワハラ保険

今回の問題ですが、豊田真由子議員は損害賠償請求を受ける可能性があると思われます。報道によれば、過去に100人程の秘書がお辞めになられているとか。

中には体調を崩して入院された人もいるようです。それらの中に、今回のように録音データなどがあれば、次から次へと訴えられることになるのではないでしょうか。今の時代、菓子折りを包んですみませんと言えば許してもらえる時代ではありません。損害を受けたら損害賠償金を請求される時代なのです。新座市民を落胆させ、多くの人を呆れさてしまった今回の問題。それも働き方改革を進める国会議員の一人は改革どころではないようです。政府がすすめる働き方改革は、一部の政治家は理解されていないということでしょう。

弊社がご案内をしている労災あんしん保険の中に、雇用関連賠償責任補償という特約がありますが、この補償は法人などがパワハラで訴えられ、法律上の損害賠償責任を負担する場合等が対象となります。しかし、お客様を選択していきませんと、保険の公平性を欠くとんでもない顧客を掴まされる事になりますので、弊社としてもお引受にはくれぐれも注意したいと考えさせられました。