オールリスク型の賠償責任保険の加入は来店されたお客様へ対してのマナー

飲食業の事業者様から次のような要望があります
- 飲食店なので食中毒を出したら大変。起きるとはおもえないのですがPL保険だけは入りたい・・・
- 関連企業からイベント出店にPL保険の加入が必須と言われたので・・・
- 居酒屋なので生の食品を扱うため、起きること思えないが食中毒に備えてPL保険に入りたい・・・
確かに、食中毒など出てしまうことは本当に稀かもしれませんが、もしもの事故に備えて加入しておきたいお気持ちは良く理解できます。はじめに食中毒の事故が起きてしまったときの事を考えてみましょう。
一般的なPL保険(生産物賠償責任保険)の補償内容

飲食業の場合、食中毒をご心配される事業者様が多いです。
PL保険の一般的な補償内容は、パンフレットから次のようになっているケースがネットで検索出来ます。
- 損害賠償金
- 弁護士費用などの争訟費用
- 求償権の保全・行使などの損害防止軽減費用
- 事故発生時の応急手当などの緊急措置費用
- 保険会社の要求に伴う協力費用
飲食業が食中毒を起したしまった場合に考えられるリスクと取るべき行動
飲食業で提供した食事から、来店されたお客様が食中毒となってしまったケースを考えてみてください。
1.お客様への初動対応とその後のフォロー
お詫び
・お客様に心からの謝罪を伝える。
・状況を丁寧に聞き取る。
緊急対応
・お客様がまだ医療機関を受診していない場合は、すぐに受診を勧める。
・必要に応じて、医療機関への交通費を提供するなど、サポートを申し出る。
診断結果の確認
・お客様が診断を受けた場合、医療機関での診断書の提出を依頼する(食中毒であることを確認するため)。
その後の健康状態を確認
・お客様に連絡を取り、体調が回復したか確認する。
・必要に応じて、追加の医療費やサポートを検討する。
信頼回復の努力
・お客様の声を真摯に受け止め、再発防止策について説明する。
・場合によっては、謝罪文や割引券の提供を検討する。
2.保健所への連絡
食中毒の可能性を報告
・食中毒の疑いがある場合、速やかに管轄の保健所へ連絡することが義務付けられています。
・保健所の指示に従い、調査や検査に協力する。
原因食品の特定
・提供した料理や食材について詳細な情報を保健所に提供する。
・食材のロット番号や仕入れ先の情報を用意。
3.店内での調査と対策
原因の特定
・該当する食材や調理過程を調査する。
・仕入れ先や保管状態、調理方法を再確認する。
汚染リスクの排除
・問題が判明した食材を廃棄。
・調理器具や調理スペースを徹底的に清掃・消毒する。
従業員への教育
・食中毒に関する知識を従業員に共有し、再発防止策を徹底する。
・例えば、魚介類を加熱調理する、冷凍処理(-20℃で24時間以上冷凍)するなどの方法を周知する。
4.公的対応と評判管理
保健所の指示に従う
・調査結果を待ち、再営業許可が出るまで営業停止となる可能性があります。
・営業再開時には、店舗内外の衛生管理強化策をアピール。
情報発信
・必要であれば、公式サイトやSNSでお詫びと再発防止策を公表する。
・透明性を持って対応することで、信頼回復につながります。
このように飲食店が食中毒事故を起してしまいますと色々と行う事が多く、元の営業に戻るためには時間や労力が掛かります。続きまして、被害額については次のような事が考えられます。
食中毒は一般的なPL保険(生産物賠償責任保険)の対応はどうなるのか?
-
賠償責任保険の確認
- 飲食店が加入している生産物賠償責任保険(PL保険)が適用される可能性があります。
- 保険会社や代理店に連絡し、事故内容を報告する。
- 医療費や慰謝料の負担
- お客様が負担する医療費や、その他の損害について賠償を行う必要があります。
- 保険適用範囲外の損害がある場合は、店舗側で負担するケースもあります。
PL法に基づき、あなたの飲食店(加害者)は、被害者であるお客様へ損害賠償責任を負いますが、考えられる金銭的な補償としましては、被害者の病院に掛かる治療費用や交通費、お仕事を休まれた時は休業損害、精神的慰謝料、これらがPL保険でお支払いできる※ことが考えられます。
※契約内容や約款による。
やっぱりPL保険は必要不可欠だね。と考えられた事業者様も多いかと思います。ですが、実際に事故が起きますと、飲食店に間接的な損害が発生することが考えられ、それだけでは済まない金銭的な補償や労力が発生することが考えられます。治療費用や、休業損害、慰謝料を支払ってくだされば問題なさそうと思った方は次のオプションも必要であることをご理解ください。
PL保険を強化する重要なオプションも必要?

食中毒で苦痛な思いをされて、更に手術があったり、何日も入院されているお客様へ謝罪に行かれる際に飲食店の対応として、いわゆる「手ぶら」では行きづらいかと存じます。特にお得意様や常連顧客なら尚更です。
一方、食べ物で治療を受けているお客様(被害者)にお茶菓子などの飲食物では気の利いた手土産とは言えないでしょう。
では何が良いか?ここは慣習としてお見舞いを現金を包むことが望ましいかと思います。しかし、このお見舞い費用ですが保険会社が払ってくれるでしょうか?食中毒の原因となった特定の食材を食べられた被害者(お客様)の対象者が数多くいたら、このお見舞い費用や一人一人への労力、交通費も重なることが考えられます。
場合によっては、
- 被害者の食中毒による治療が長期になる
- 被害者の所得が高額で休業損害も高額になる
などの条件が重なり、被害者からの請求が高額の場合には、飲食店の支払が追いついていけず、保険会社から内払いが必要となるケースも考えられます。
更に被害者からの相談で、
- 救急車で運ばれ初診の検査など大きな医療費の金額となった。支払はどうすれば良いか?
- 入院期間中、業務連絡等が欠かせないために個室に変更したいが問題無いか?
- 緊急入院した病院では通院できない。近くの病院に行きたいのだが対応出来るのか?
等の連絡が来たらその都度相談を受けることになり事業者としての対応労力は計り知れません。
よって、一般的なPL保険の補償の他に、
- 見舞金の費用や交通費などの間接的な費用
- 内払いが出来る
- 保険会社の示談代行サービスの付帯されている
このような補償内容でないと加害者である事業者様の金銭的な負担や労力の負担が大きくなることが考えられます。
尚、飲食店がお店を休まれた時には休業損害も考えられますので、事業者は「いわゆるPL保険のみの補償」だけでは、実際に事故が起きたときには間接的な費用の損害が色々と掛かります。あらゆるリスクを想定した保険の加入がございませんと原状復帰するまで遠のいてしまうことが予測されます。
PL保険に加入をしていても保険会社が出来ることは限定的
被害者への連絡とか、被害者が入院している病院への連絡などの示談代行は保険会社が全てやってくれるのではないか?と思われた事業者様も少なくないかと存じます。答えは残念なことに保険会社は示談代行の対応※をしてくれません。
一般的なPL保険は、事業向け賠償責任保険の部類に属するため、示談代行サービスが付いていないことが一般的です。
よって、保険会社が出来ることは限定的となりますので、食中毒事故が発生してしまうとあなたの飲食店の誰かが窓口となることが考えられ、精神的な負担と共に、時間的な負担も発生してしまうことが考えられます。
※示談代行サービスのある賠償責任保険であれば、対応をしてくれます。
PL保険とその他のオプション以外の補償も必要?

飲食業は食中毒による損害リスクの他にオプションも必要とお伝えしましたが、更にPL保険+オプションだけでは補償の対象とならない次のような事故が考えられます。
- 施設の賠償責任事故→店内で床が濡れており、お客様が滑って転倒し大怪我を負った
- 業務中の賠償責任事故→熱いお料理を運ぶ際に従業員が誤ってお客様にかけてしまい火傷を負わせた
- 保管財物の賠償責任事故→お客様から預かったコートを汚してしまい全損
このような事故を補償するには、施設における管理不備の補償、業務中の事故の補償、保管財物の事故の補償を付帯しておかなくてはならないのです。
PL保険(生産物賠償責任保険)だけ入っていれば良いだろうとは考えずに、飲食業の皆さまは考えられるリスクを想定して、施設の賠償責任事故、業務中の賠償責任事故、保管財物の賠償責任事故などトータル的な補償が出来る総合的な賠償責任保険の加入をすることで更なる安心が出来ると言えるでしょう。
この記事のまとめ

いかがでしたでしょうか?PL保険の単独契約は安価で加入することは出来ますが、補償範囲が限定的であることが注意する必要があります。
飲食業として事故からお客様を守ること、PL保険の他にも施設賠償責任補償や業務中の事故、保管財物の事故まで保険加入されていることが宣言できたら、尚、お客様は安心できるのではないでしょうか?
総合的に補償の出来る賠償責任保険に加入していたら、上記内容のような画像をInstagramやFacebookなどのSNSであげるのもお客様から更に支持をされるかもしれませんね。