飲食店・小売店にPL保険は必要ですが加入先が見つからない?

PL保険(生産物賠償責任保険)の加入が難しい原因とは?
飲食店や、飲食物を小売される小売店の皆さまは、提供した食事や、販売した飲食物による食中毒の事件を心配されます。もしもの食中毒に備えてPL保険(生産物賠償責任保険)の加入で備えたい。と考えられる事業者さまも多いことでしょう。
ところが、そのPL保険の加入を販売する保険会社や代理店に依頼をしたら断られるケースがございます。本日のブログはPL保険を断られてしまう理由と、加入する為にはどうしたら良いか?を考えて行きましょう。
はじめにPL保険の加入を断られる理由を紹介します。
保険契約とは、加入する契約者と販売する保険代理店のお互いの合意が必要となりますので、加入する契約者は商品の内容や条件等で自分の意向に合わなければ、お断りすることも出来ます。その一方では、保険代理店も契約条件が販売する意向に合わなければ契約をお断りすることもあるのです。
PL保険の場合は加入するお客様側ではなく、次のように販売する側に要因があるように思えます。販売する上で加入障壁となる4つの理由を解説します。

保険料が低コストの為、安価である
1つ目の理由としましては、保険料が安価であることです。お客様に取って安価であることは低コストの為、大変良いことですね。
一方、お客様のお支払いする料金が安価であることが反面、販売する代理店のメリットが薄いということになります。安価であるということはPL保険を販売する代理店にとっては、利益が出ず契約することのメリットが少ないのです。
代理店の手数料は10%~20%程度であることから年間保険料が1万円の契約なら1000円から2000円程の手数料になります。
代理店がお客様と合って説明する時間、契約するにも時間が掛かります。そこに掛かる人件費や、書類郵送費、契約管理に掛かる費用を差し引くと安価な契約は販売する代理店が割に合わないということがあります。
飲食店・小売店は1万円を稼ぐのも大変ですので、毎年1万円の支出があるのも痛いところです。一方、保険代理店もお客様からいただく保険料がそのまま利益になるということでは無い為、加入障壁となるのです。
事故時の負担が保険販売店に掛かる
2つ目の理由としましては、事故時の負担が代理店に掛かることです。
一般的に企業向け賠償責任保険(PLを含む)には保険会社の示談代行サービスが無いため、事故が起きたときには加害者と被害者でのやり取りとなることが考えられます。
一方、加害者である事業者は事故時の対応に慣れていないケースが考えられる為、代理店に今後どのように進めていくか?など具体的な相談が必要となることがあり、こうなりますと代理店に時間的な負担が強いられます。
代理店の負担が掛かると言うことはそれだけ、事故への解決が遅なり結果的に事業者様にご不快な思いをさせてしまったり、ご迷惑をお掛けしてしまうこともあります。保険代理店は、弁護士でも保険会社の事故担当ではなく事故解決の専門プロではありません。
- 契約(継続含む)手続きの複雑さに一定の手間が必要
3つ目の理由としましては、契約手続きの負担です。
PL保険の契約(継続含む)には、代理店がお客様へのお電話の意向確認だけでは手続きは終わりません。お客様が法人であれば決算書のご提出、個人事業主なら確定申告書のご提出による売上高の確認が必要となります。
満期のご案内を郵送→到着を見てご連絡→決算書、確定申告書の確認→本年度のお見積り提示→ご契約の手続きとなります。
飲食店・小売店のお客様は、少人数で営業している事業者様が多く、普段から、店舗に集中してお仕事をされておりますので、忙しくて大切に保管されている決算書、確定申告書はすぐにご用意をいただけない事もあり、スムーズな契約(継続)とならないことがあり一定の手間が掛かることが加入障壁となります。
- 代理店の損害率の悪化の恐れ
4つ目の理由としましては、損害率の悪化の懸念です。
年間保険料1万円の契約に対して、事故による支払い金額が100万円となる場合は100倍となります。この場合、保険料1万円の契約に対して収支を得るには100年掛かりますが、販売コストや人件費を含めて考えると100年でも収支が合わないということになるのです。
このように、安価な保険料に対して、何百倍の保険金が支払われた場合、保険会社と代理店の損害率の悪化となります。代理店の損害率が悪化しますと、保険会社から翌年度の利益(代理店手数料)が全体で減らされることになりますので、PL保険のような安価で何百倍もの保険金が出る可能性のある契約は慎重になったり、躊躇してしまう代理店もあるのです。
弊社限定・お客様の見極め方
これらの4つの理由の他にも、弊社では、この経営者さんは残念なことにプロ意識が低いな?と感じさせられる事業者様があります。これらの事業者は、事故を起される可能性が高く、事故が起きると問題が大きくなる可能性があると見ているためにお断りするケースもあります。具体的にはこんなケースの事業者様です。
- 専業の経営ではなく副業や多角化経営の為、知識が不足している事業者さま
副業や多角化経営で飲食店・小売店を始められてPL法など最低限必要な知識を理解しようとせず、経営に対するプロ意識が低いと見受けられる場合
- 完全利益追求型の事業者さま
経営のノウハウはあるが、利益追求の為に現場での事故に関する意識が薄く、事故の際には、経営者の怠慢な態度や行動により被害者の感情が悪くなり問題が大きくなる
- 人任せ主義な考え方の事業者さま
事故が起きたら、慣れていなくて不得意な分野という理由で自分でも解決しようと試みることをせず保険会社に丸投げをしようとする
保険料を払うのに何故、契約をお断りされるの?と思われた方もいるかと存じます。弊社のように長年、保険営業をしていますとこのようなパターンの経営者との出会いを経験することがあり、過去の経験から逆選択を防ぐための対策をしているのです。
安価なPL保険に加入するにはどうすれば良いか?

それでは、売上高が大きい大企業と比較して個人事業主などの皆様がPL保険をどうしたら加入が出来るのか?考えられる方法を3つお伝えします。
- 代理店にPL保険を前向きに契約したい事をお伝えしリスク対策を説明する
前向きに検討していることをお伝えすると良いと思います。独自のリスク対策を説明し本気で加入したいことをお伝えしましょう。
(例)商品やサービスに対するリスクを最小化する取り組みを明確にし、保険会社に説明
(例)万が一のトラブル時に迅速に対応できる仕組みを持っていることを説明。
それでも、PL保険を単独で引受けてくれないようであれば、どうすれば契約できるか?を確認しましょう。例えば、他の損害保険の契約と抱き合わせ販売であれば引受可能というケースがございます。
- 既存のお付き合いのある保険代理店や知り合いを辿ってみる
日頃、付き合いのある保険代理店がいましたらPL保険を扱っているのかを聞いてみましょう。既に他の保険契約があれば、PL保険を引受けてくださる可能性が高まります。もし、直接の知り合いがいなければご家族がお付き合いのある保険代理店、友人がお付き合いのある保険代理店、同業者のお付き合いのある保険代理店など知り合いを辿っていきましょう。
- 商工会や団体に入会し加入する
商工会や団体に入会しますと、PL保険の加入を受けてくれる場合があるかと存じます。この場合、それぞれ団体への入会費用が別途必要になるケースが考えられます。
ここまでのまとめ
PL保険の加入を断られる理由と、PL保険に加入するにはどうすれば良いか?をお伝えしました。
更に具体的になりますが、
- 安価であること→個人事業主の加入するPL保険は安価になります。他の保険契約を同じ代理店に任せることでクリアできるかも知れません。
- 契約手続きの手間→契約(継続)時には、代理店から求められた資料をすぐに提出するなど契約に負担をかけず協力的であることを伝える。
- 事故時の負担→事故時には速やかに保険代理店に報告することと、常に協力的であることを伝えると良いです。クレーム対応体制を整備することで、信頼性を向上させます。
- 損害率悪化の懸念→他の保険契約をすることで分母が広がり、損害率の圧縮が出来ます。
このように、小規模事業者・個人事業主の皆さまが思われる程、PL保険だけの加入は容易ではないという事も言えるでしょう。
一方、PL保険の加入の近道はまずはリスク対策を提示して、事故が起しづらい環境下にあることを示すことは最低限必要です。その他の損害保険の契約や何らかのメリットを与えてあげると加入がしやすくなります。またお知り合いや同業者を辿っていったり、団体などで探せば加入する道もあります。
私は、個人事業主にPL保険(生産物賠償責任補償)のみを積極的に販売している損保代理店を見たことがありません。弊社の知り合いである他の代理店主に聞いても、既存顧客でなければ販売しないことが多いようです。
また、弊社にもPL保険(生産物賠償責任補償)の加入相談が多数ございますが、単体の加入はお断りしておりまして、当ページにある「事業をおまもりする保険」(PL保険(生産物賠償責任補償)が付帯されている)をおすすめしているのが現状です。
PL保険の加入をあきらめないで食中毒のリスクに備えるべき

費用を払う方が、保険の加入が出来ないなんて何だかおかしいな?と思われた事業者様も多くいるかと思います。躊躇してしまい、PL保険の加入は後回しにしようとなるケースも考えられます。
それでも、事業者の皆さまにお伝えしたいのは、食中毒の事故が起きますと被害者に対して金銭的な補償が必要となります。場合によっては、1度の事故により廃業に追い込まれることを考えられますので、自分の身を守る、お客様を守るためにもPL保険は、様々な加入障壁を乗り越えてでも加入をしましょう。
- 提供したお刺身をお客さまが食べたところ、急激な腹痛に襲われ病院を受診。原因はお刺身の中にいたアニサキスだったことが判明。
- 提供したパンが原因で集団食中毒を発生させてしまった。
飲食物を取扱う事業者様は食中毒のリスクは避けて通れませんし、小売店やキッチンカーの運営者なら、施設で仕事をする上でPL保険の加入は必須条件となる場合もございますので、保険加入をしないでそのままにしておく訳にもいきません。
安心した飲食店・小売店経営をする為にはPL保険の加入は最低条件かと存じます。お客様へ対するマナーとしてもPL保険の加入をおすすめします。